国師先生と遥佳さん Kokushi & Asuka

9月『おじいちゃん・おばあちゃんにはいつまでも元気でいてほしい!』

こんにちは、遙佳さん。夏休みは短いながらゆっくりできたかな?

こんにちは、国師先生。お盆の間は実家に帰ってゆっくりできました。これまではコロナが心配でオンライン帰省ばかりでしたので、久しぶりに会えて良かったです。

おばあさま、おじいさまは孫と一緒に過ごすことができて嬉しかったと思うよ。

普段会う機会がないこともあって、未だにかわいがってもらえます(笑)。体調とか飲んでいる薬とかの話をしていると授業や実習で聞いたことのある内容も出てきましたね。

どうしても人間は加齢によって生理機能が衰えるから、高齢者の方々は複数の薬を継続的に飲む場合が多いね。

実習でも高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症などの薬を使っている方が多かったように思います。あとはおじいちゃんが前立腺肥大症の薬を、おばあちゃんが骨粗しょう症の薬を使っているようなイメージです。

もちろん男性にしか前立腺は存在しないし、女性は閉経後エストロゲンの分泌量が低下する結果、骨吸収(破骨細胞により骨が壊されること)が抑制されにくくなるからね。

骨粗しょう症では服用方法が特殊なビスホスホネート製剤が有名ですよね。

ビスホスホネート製剤は破骨細胞の機能を抑制する、破骨細胞自身のアポトーシスを誘導するといった効果で骨粗しょう症を抑えているけど、他の骨粗しょう症の薬がどのように作用するかは知っているかな?

エストロゲンが足りなくなると骨がもろくなるなら、エストロゲンを補充する薬があるでしょうか?

その通りだよ。エストロゲンは骨吸収を抑制する作用があって、エストロン、エストリオール、エストラジオールの3種類のホルモンからなるけど、そのうちエストリオール錠、エストラジオール錠・貼付剤が婦人系の疾患以外にも閉経後骨粗しょう症に使われている。あとはエストロゲン様作用を示す選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective Estrogen Receptor Modulator : SERM)と呼ばれる薬[ラロキシフェン、バセドキシフェン]があるね。エストロゲン受容体に作用する薬は血栓形成を促進するから、肺塞栓症や深部静脈血栓症などの患者や既往歴のある患者には使ってはいけないことになっているよ。

そうなのですね。他にも骨吸収を抑制する薬は使われていますか?

エストロゲン受容体に作用するもの以外だと、血液中のカルシウムを骨に移動させることで血中のカルシウム濃度を下げる作用のあるカルシトニンを製剤化した薬[エルカトニン、サケカルシトニン]、破骨細胞の活性化に関与すると考えられているNF-κB活性化受容体リガンド(Receptor Activator for Nuclear factor-κB Ligand : RANKL)に結合するヒト型モノクローナル抗体製剤[デノスマブ]が骨吸収を抑制する薬だね。

一口に骨吸収を抑制する薬と言っても色々あるんですね。骨形成(骨芽細胞により骨が新しく作られること)を促進する薬はありますか?

骨形成を促進する薬としては、①カルシウムの腸管での吸収・尿細管での再吸収を促進する活性型ビタミンD3製剤[アルファカルシドール、エルデカルシトール、カルシトリオール]、②骨芽細胞の働きを助けるビタミンK2製剤[メナテトレノン]、③2年の投与制限のある副甲状腺ホルモン製剤[テリパラチド]が主に使われているね。副甲状腺ホルモンは骨吸収を促進して血中のカルシウム濃度を上げる作用があるから骨粗しょう症の治療薬としては一見矛盾しているように思えるけど、週に1回(商品名:テリボン)、または1日1回(商品名:フォルテオ)の投与なら骨芽細胞の機能を大きく活性化させて骨形成が骨吸収上回ることで骨粗しょう症に効果があると言われている。

なるほど。骨吸収に関わる破骨細胞の働きを抑えるか、骨形成に関わる骨芽細胞を活性化するかで選択する薬が変わってくるのですね。

骨粗しょう症は国試でもよく出題される疾患だから、しっかり覚えておこう。ちなみに第110回にも関連する問題がいくつか出題されているね。

今日勉強したことを使いつつ、患者さんの背景を含めて考えると答えが出せそうです。私の学力も勉強や去年の病院・薬局実習を思い出しつつ、少しずつ骨太にしていきたいです!

国試まであと半年を切ったからね。するべきことを一つずつ確実にしていこう。

また来月もよろしくお願いします!

第110回-問286-287

67歳女性。既往歴及び服薬歴はない。大腿骨近位部骨折のため、1ヶ月間入院加療することになった。入院時の大腿骨骨密度は、若年成人平均値(YAM)の65%であり、血清カルシウム値9.6 mg/dL、血清リン値3.5 mg/dLであった。
退院時に以下の治療薬が処方された。

(処方1)
リセドロン酸Na錠17.5 mg   1回1錠(1日1錠)
                 1日1回 起床時 4日分(1週間に一度)

(処方2)
エルデカルシトール錠0.75 μg  1回1錠(1日1錠)
                 1日1回 朝食後 28日分

約1ヶ月後に同病院の診察前の薬剤師外来にて服薬について患者にインタビューしたところ、服用を大変面倒と感じており、飲み忘れることが時々あるとのことであった。残薬を持参するよう患者に伝えたが、その後の外来受診でも持参しなかった。退院から約半年経過してようやく持参した薬剤を確認したところ、リセドロン酸ナトリウム錠は10錠、エルデカルシトール錠は50錠の残薬が認められた。

問286

この患者の病態及び治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 原発性の骨粗しょう症と考えられる。

2. 発症に、カルシウム不足による骨基質の石灰化障害が関与している。

3. 入院前は、骨吸収が骨形成を上回った状態と考えられる。

4. 処方薬はいずれも横臥状態での服用が可能である。

5. エルデカルシトールは、リセドロン酸による低カルシウム血症を増強する。

問287

患者の服薬遵守状況が良好でなく、治療効果が十分得られていないことを医師に報告し、薬剤の変更などの提案を行うことになった。提案として適切なのはどれか。2つ選べ。

1. リセドロン酸ナトリウム錠をラロキシフェン塩酸塩錠に変更

2. メナテトレノンカプセルの追加

3. リセドロン酸ナトリウム錠を月1回服用製剤に変更

4. リセドロン酸ナトリウム錠からテリパラチド皮下注(1日1回)自己注射に変更

5. リセドロン酸ナトリウム錠からデノスマブ皮下注(6ヶ月1回)に変更


↓解答↓











解答:

問286:1、3

問287:3、5

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